正義の仮面と悪魔の涙
- 奧村 哲次

- 1月7日
- 読了時間: 3分
更新日:3月27日
プロローグ:善悪の境界
この世界には二つの存在がいた――「正義のヒーロー」と「悪魔」。

ヒーローは人々を救い、悪を滅ぼす者として称賛された。
悪魔は恐れられ、世界を脅かす存在として憎まれた。
しかし、この物語は、誰もが知るその構図を根底から覆す。
第一章:光と闇の出会い
「デウス」。それが正義のヒーローの名だった。
彼は神々しい鎧をまとい、悪を裁く存在として崇められていた。人々は彼に絶対の信頼を置き、デウスはその期待に応えるために戦い続けていた。
対する悪魔「ルシス」は、影に潜む存在として恐れられていた。
ある日、デウスはルシスが村に現れたと報告を受け、剣を手に駆けつける。しかし、彼が目にしたのは村を襲うどころか、倒壊した家屋から子供を救い出すルシスの姿だった。

「貴様!悪魔のくせに何をしている!」
デウスは剣を突きつける。しかし、ルシスは静かに答えた。
「悪魔だからといって、悪を望むわけではない。」
その言葉に、デウスは困惑する。
第二章:偽りの正義
デウスは、自らが悪魔を討つことを宿命づけられた存在であると信じていた。しかし、彼が戦ってきた悪魔たちの多くは、決して人々を襲ったわけではなく、ただ異形であるがゆえに恐れられていただけではないのか?
思い返せば、自分は命令に従うまま、罪なき存在も刈り取ってきたのではないか?
「お前は何者だ?」
デウスはルシスに問う。
「私もまた、人々を守るために創られた存在だ。だが、人とは違う姿だったために悪魔と呼ばれ、追われるようになった。」
ルシスの言葉は、デウスの心を揺るがした。
第三章:善悪の起源
デウスは自らの起源を探るために、創造主である「神殿」へと足を踏み入れる。そこで彼は衝撃的な事実を知る。

デウスもルシスも、元は同じ技術から生み出された存在だった。
デウスは人々の恐れを取り除くために「正義の象徴」として創られた。
ルシスは人々を守るために「力の象徴」として創られた。
だが、人々はルシスの姿を恐れ、悪魔と名付けた。そして、デウスに「悪魔を討て」という使命を課した。
正義と悪は人間の恐れから生まれた作られた概念だった。
第四章:戦いの果てに
デウスは迷いながらも、使命に従おうとルシスと最後の戦いに挑む。
剣を交える中で、デウスはルシスの強さが「守るための力」だと確信する。対して、自分は「滅ぼすための力」しか持たないことを悟る。

「私は……正義ではなかったのか……?」
デウスは膝をつき、涙を流す。
「お前は正義を強要された哀れな存在だ。」
ルシスはそう言って、デウスを抱え上げる。そして、彼に言葉を残した。
「正義も悪も、人が決めた言葉にすぎない。だが、俺は誰かを守り続ける。それが悪と呼ばれても構わない。」
エピローグ:新たな道
デウスは自らの鎧を捨て、ルシスと共に歩むことを決意した。

人々は相変わらずルシスを悪魔と呼び続けたが、彼はその言葉に怯えることなく、弱き者を守る存在として生き続けた。
一方、デウスは「元ヒーロー」として人々から忘れ去られていった。しかし、彼はそれを受け入れた。
「正義は押し付けるものではない。」
その言葉を胸に、彼は新たな人生を歩み始めた。
教訓:正義とは何か?
この物語は問う。
「自分の正義を他人に押し付けてはいないか?」
「悪と決めつけたものに向ける目は、本当に正しいか?」
人は善悪を決める言葉を生み出した。だが、言葉が生まれる前の世界には、ただ行動があっただけだったのではないか?
現代の世の中でも、正論や理論により、自身の正義を押し付けている事はないですか?
――正義と悪魔は表裏一体。押し付けられた正義は、誰かにとっての悪魔かもしれない。








