「アカウント、また作りました。」──その投稿が、次の“罠”になっていませんか?
- 奧村 哲次
- 1 日前
- 読了時間: 4分

1. はじめに
最近、Instagramでよく見かける投稿があります。
「アカウントが乗っ取られたので、新しく作りました!」
たしかに、その気持ちは痛いほどわかります。
突然ログインできなくなり、写真もメッセージも消え、
「やられた!」という絶望の中で、
新しいアカウントを作るしかない人も多いでしょう。
ただし、アカウント乗っ取りに遭われた方の中には、必ずしも「騙された」わけではありません。SNS側のシステム的な脆弱性や、外部サービスの情報流出、パスワードの使い回しによる不正ログインなど、技術的要因によって被害が発生するケースもあります。
つまり、「自分が悪い」わけではないということ。
まずは冷静に、何が起きたのかを正しく知ることが大切です。
でも──
実はその投稿こそが、次の攻撃者の“餌”になっていることをご存じでしょうか?
2. 「偽アカウント」と「乗っ取りアカウント」はまったく別物
まず整理しましょう。
見た目は似ていますが、この2つは根本的に違う被害です。
種類 | どう作られるか | 騙された本人の関与 | 被害内容 |
偽アカウント(クローン) | 公開情報をコピーして新規作成 | ❌ なし | なりすまし・詐欺DM |
乗っ取りアカウント | 本人のパスワード/認証コードを盗んで不正ログイン | ✅ あり | 本物アカウントを奪われる |
偽アカウントは「あなたが人気だから」作られる。
でも、乗っ取りアカウントは「あなたが一度騙されたから」成立する。
ここを混同してしまうと、また同じ罠にかかります。
3. 乗っ取りの9割は「一度騙された」ことから始まる
最近特に多いのが、
「オンラインアンバサダー投票」詐欺。
DMでこんなメッセージが届きます。
「投票してくれたら助かる!LINE(またはWhatsApp)で認証コード送るね!」
そして届いた6桁のコードを、
「投票に必要」と思い込んで相手に伝えてしまう。
でもそのコードは、実はあなたのInstagramのログイン認証番号です。
つまり、その瞬間にあなたのアカウントの鍵を渡しているんです。
怖いのは、「自分は判断力があるから大丈夫」と思っている人ほど、
身近な相手を信じてしまうこと。詐欺は“技術”ではなく“心理”を突いてきます。
4. 「アカウント作り直しました!」投稿が、なぜ危険なのか
被害直後に「アカウント作り直しました」と発信すると、
見た人にはこう映ります。
“この人は一度騙された”と誰でも分かる。
攻撃者からすると「セキュリティ意識が低い=再び狙いやすい」。
同時に「新しいアカウントの信用が薄い」ため、友人も混乱。
つまり、善意のつもりで出した投稿が、
次の攻撃者にとって**“目印”になってしまう**のです。
5. 大切なのは「恥」ではなく「仕組みを知ること」
乗っ取りに遭った人が悪いわけではありません。
人を信じたからこそ起きた被害です。
けれど──「やられた」で終わらせず、
“なぜやられたのか”を知ることが、
次の被害者を減らす唯一の方法です。
だから私は、こう伝えたい。
「自分が馬鹿だった」ではなく、「自分が一度、学んだ」 と言ってほしい。
6. 今できる3つの自衛
① コードを“誰にも”教えない
LINE・WhatsApp・DM──すべて同じです。
「認証コードを送って」と言う人には、どんな関係でも渡さない。
② 2段階認証を「認証アプリ」で設定する
SMSは簡単に盗まれます。
Google AuthenticatorやAuthyを使えば格段に安全です。
③ 「アカウント作り直しました」よりも、「注意喚起」を
次に発信するなら、こう書いてください👇
「私の名前を使った偽アカウントが出ています。認証コードを求めるDMは全て詐欺です。私からそんなお願いは絶対にしません。」
この一文が、あなたのフォロワーを守ります。
7. 終わりに──恥ではなく、共有を
SNSは「信頼」でつながる世界です。
だからこそ、騙されたことを恥じる必要はありません。
大切なのは、
その経験を“防波堤”に変えること。
あなたが一度の失敗から立ち上がる姿は、
誰かのセキュリティ意識を救う力になります。





