『未来神教とマーケの聖職者たち』
- 奧村 哲次
- 5月26日
- 読了時間: 5分
―祈る者たちと、動く者たち―
※この物語はフィクションです。登場する国家・宗教・人物・施策・マーケティング用語は、現実世界を風刺的に描いたものであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。が、よく似た構造には注意を。
■ 序章：祈る国家ユクトピア
かつて繁栄を極めた国家ユクトピア。
だが少子高齢化と経済停滞により、国内の消費は冷え込み、人々の希望はすっかり失われていた。
そんな国で信仰を集めていたのが、「未来神教」と呼ばれる宗教だった。
この宗教は、人々にこう説いていた。
> 「未来は予言できる。成功も、売上も、再生回数も、バズりも、すべては導かれている」
この言葉に縋った人々は、自ら考えることをやめ、“神託”を授かるマーケティング司祭たちにすべてを委ねた。
■ 第一章：マーケの聖職者たち
未来神教の総本山「バズリア神殿」には、様々な聖職者が存在した。
- **コピー祈祷師**：「エモい言葉は、世界を救う」
- **預言師（フォロワー占い師）**：「今週バズる色は“淡ピンク”です」
- **広告錬金術師**：「CPCとCPAが神の意志を示す指標です」
- **KPI伝道師**：「今月の神託KPI：CVR2.4%超えを祈りましょう」
人々は彼らに祈祷料（マーケ予算）を支払い、
聖なる資料（パワーポイント）を受け取り、
神聖なるインサイト（過去バズ事例）を音読して拝むのが日課だった。
誰もが「成功の再現」を信じていた。
数字と流行は“神の言葉”だった。
■ 第二章：異端者ソウジ
そんな世界に疑問を持つ若者がいた。
名前はソウジ。中小のアパレル店を営む青年だ。
祈祷師に10万円を支払い、“エモいコピー”を授かったが、売上は1円も上がらなかった。
預言師の「今週はZ世代が“自然回帰”に反応します！」という助言に従い、
天然素材の服を打ち出したが、誰も見向きもしなかった。
ソウジはつぶやいた。
> 「これ……ほんとに意味あるのか？」
ある日、彼の店を訪れた老婆がこう言った。
> 「あんた、自分で“試して”みたことあるのかい？」
この言葉に目を覚ましたソウジは、祈ることをやめ、自分で動くことに決めた。
「ありがとう」と言われるまで、何度でも商品を改善しよう。
インサイトではなく、“会話”から学ぼう。
そうして、小さな検証を繰り返した。
初めて、自分の服を買ってくれた顧客からこう言われた。
> 「この素材、着心地がいいね。誰かがちゃんと考えてくれた気がする」
たった一人の言葉に、ソウジは震えた。
それは、これまでの祈祷や数字では得られなかった“実感”だった。
■ 第三章：異端審問
未来神教の聖職者たちは、この異端の動きに敏感だった。
「予言なき実行など、神への冒涜だ」
ソウジは捕らえられ、公開処刑が命じられる。
神殿広場に縛りつけられたソウジは、処刑前夜、こう叫んだ。
> 「AIですら、“起こっていない未来”は語れない！
> それなのに、なぜ人間が『必ず成功します』なんて言えるんだ！？
> その言葉は、幻想だ。希望に見せかけた、商売だ！」
群衆はざわついた。聖職者の表情も、揺らぎ始めていた。
■ 終章：検証者ノ道
処刑は実行されなかった。
翌朝、聖職者の一人がこう言った。
> 「……私は、売れたかどうかを“祈る”よりも、“確かめたい”」
少しずつ信徒たちが抜け、ソウジの元へ集まり始めた。
彼らは「検証者ノ道（The Path of Trial）」という名の集団を作り、こう語った。
> 「未来は、予言ではなく、実行と検証から生まれる。
> 祈るな、試せ。仮説を持て。そして学びを重ねろ。」
やがて未来神教は衰退し、
数字ではなく“顧客の声”を信じる者たちが、世の中を動かしていった。
■ エピローグ：奥村の哲学
この物語はフィクションである。
だが現実でも、祈るような資料と、保証なき言葉に溢れている。
そして、AIですら「起こっていない未来」には何も言えない。
ならば我々は、“すでにある過去”を学び、“今ここで”動くべきなのではないか？
あなたは、どちらの信者だろうか。
> 「絵に描いた餅を拝む者」か。
> 「小さく試して、確かに食べる者」か。
■ 最後に──憧れるな、「宗教的マーケティング」に
「SEO対策します」「LP改善します」「リード獲得できます」と言いながら、“成果報酬型ではない”マーケティング会社には注意しよう。
「資料は完璧」「戦略は華やか」だが、自分の手は動かさない・動かせないコンサルタントにも注意しよう。
「バズるかも」「共感されるはず」「エモいので刺さる」…それらはすべて、起こっていない未来への信仰に過ぎない。
あなたのビジネスは、誰かの予言ではなく、あなた自身の実行でしか変えられない。
どうか、絵に描いた餅に憧れることなく、
“目の前の顧客”と向き合ってほしい。
この物語に少しでも“ハッとした”なら、今すぐ行動を。
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